牛肉を買いだめしても、冷凍保存をすることで腐らせることなく使い切ることができます。しかし、冷凍方法をきちんと理解していないと冷凍焼けや変色してしまい、せっかくの牛肉の美味しさが損なわれてしまう原因に。
また、解凍方法を間違えるとドリップが出てうまみが流れ出てしまうこともあります。
そこで今回は、牛肉を長持ちさせつつ美味しく食べるために、牛肉の冷凍・解凍方法と冷凍した場合の消費期限について説明します。
この記事は、和牛×ギフトの専門店「肉贈」の店長松本が監修しています。
肉検定1級・2級、家畜商の免許も取得済。和牛の肥育もしています。
「和牛×ギフト」を通して、贈り主&贈り先の双方を幸せにすることを目標に日々活動中。
牛肉を冷凍する2つのメリット

牛肉を冷凍することで以下のようなメリットがあります。
- 長期保存が可能になる
- 料理の時短につながる
では、これらのメリットについて詳しく説明していきます。
牛肉を冷凍すると長期保存ができる
牛肉を冷凍する最大のメリットは、長期保存ができることです。買い物に毎日行けないため肉をまとめ買いしたり、金額が安くなる大容量パックを購入した場合などは、冷凍保存が活躍してくれるでしょう。
牛肉は普通に冷蔵保存をした場合の消費期限は2~3日程度です。しかし、冷凍保存することで半月以上も長期保存が可能となります。半月もあれば週に1度のまとめ買いであっても消費しきることができるでしょう。
また、鮮度の面でも冷蔵は日々鮮度が落ちていくのに対して、冷凍であれば新鮮さをキープすることができます。冷凍保存で食材の食感が悪くなったりしてしまうのは、牛肉に含まれる水分が凍る際に、周囲の細胞が傷つくからです。
食感が悪くなるのを避けたいのであれば、後ほど説明する冷凍方法「下味をつけて冷凍」「調理して冷凍」をお試しください。
下処理や味付けをしてから冷凍すれば料理の時短に繋がる
買ってきた牛肉をそのまま冷凍するのではなく、
- 下処理をしてから冷凍する
- 下味をつけてから冷凍する
- 調理をしてから冷凍する
このようにひと手間かけてから冷凍保存することで、料理の時短に繋がります。
一口大にカットしてから冷凍すれば、解凍すればすぐに料理に使うことができ、下味をつけておけば解凍して焼くだけで済み、調理をしてから冷凍すればレンジで解凍するだけでOKです。
特にお弁当用に調理したものをカップに詰めて冷凍しておくと、朝のお弁当作りの負担がグッと減るでしょう。
牛肉の冷凍方法3つ

牛肉の冷凍方法は以下の3つがあります。
- 小分け冷凍
- 下味をつけて冷凍
- 調理してから冷凍
それぞれ自分に合った冷凍方法を試してみましょう。
小分けで冷凍する方法
1度で使いきれない大容量パックの牛肉を購入した場合などは、1回で使用する量を小分けにして冷凍しましょう。
前述した通り牛肉の水分は食感が悪くなる原因となるため、牛肉の水分はキッチンペーパーで拭きとってから小分けします。小分けしてラップで包む場合、出来るだけ薄く平らになるように包むことで、解凍時間が短縮できます。
素手で触らず菜箸やトングを使って小分けしてください。小分けをしたらフリーザーバッグに入れて冷凍しましょう。
下味をつけて冷凍する方法
そこまで手間をかけずに日々の料理を時短したいなら、調味料を入れて下味をつけてから冷凍しましょう。フリーザーバッグに牛肉と調味料を入れてから冷凍すれば、解凍している間にも味が染みるため、料理のたびに下味をつける手間や時間をおく必要がなくなります。下味をつける場合はフリーザーバッグの空気をしっかりと抜いて、薄く平らになるように肉を広げておくと、均等に調味料が広がります。
炒め物や煮物など、よく作る料理に合わせて下味をつけましょう。
調理して冷凍する方法
調理して冷凍しておけば、忙しくてご飯を作る時間があまりない場合にも役立ちます。お弁当用のおかずの冷凍もおすすめです。
調理して冷凍する場合は、料理の水分をしっかりと飛ばしておくことが美味しさをキープするコツです。粗熱が取れたらラップに包みフリーザーバッグに入れて冷凍しましょう。
特にハンバーグは生で冷凍するよりも焼いてから冷凍した方が、解凍後に美味しく食べることができますよ。
牛肉を冷凍する際に起こりやすい失敗と対処法
牛肉の冷凍で多くの方が悩むのが、
- 冷凍焼け
- 色が黒っぽく変色する
- 解凍後に臭いが気になる
といったトラブルです。
冷凍焼けを防ぐコツ
冷凍焼けとは、冷凍庫内の乾燥した冷気に晒されることで、肉の細胞内の水分が蒸発し、肉の表面が白っぽくカサカサに乾燥してしまう現象です。
これにより肉の脂質が酸化し、風味や食感が大きく劣化します。この冷凍焼けを防ぐには、
- ラップで密着させて包む
- さらにフリーザーバッグに入れる
- 急速冷凍をする
- なるべく短期間で使い切る
また、家庭用の冷凍庫は温度変動が大きいため、業務用よりも劣化しやすい点も覚えておきましょう。
変色の原因は?
冷凍保存した牛肉の変色は、主に「酸化」と「乾燥(冷凍焼け)」が原因で起こります。
これは傷んでいるわけではなく自然な変化ですが、酸化が進むと風味が落ちるため、やはり「空気に触れさせない」ことが重要です!
部位別・おすすめの牛肉冷凍方法
同じ牛肉でも、部位によって適した冷凍保存の方法があります。
- 薄切り肉・こま切れ肉
ラップでしっかり包んで平らにして冷凍。なるべく早めに使うのがおすすめ。 - ひき肉
劣化が早いので小分け冷凍は必須。1回分ごとに薄くして保存を。 - ステーキ用の厚切り肉
1枚ずつ丁寧にラップで密封し、急速冷凍できれば理想的。 - ブロック肉
最も冷凍向き。解凍時にドリップが出やすいので、冷蔵庫でゆっくり解凍するのがおすすめ。
部位に合った冷凍方法を選べば、味の劣化を最小限に抑えることができます。
冷凍した牛肉の消味期限は?

冷凍した牛肉は種類によって賞味期限が異なります。以下を美味しく食べることができる目安として覚えておきましょう。
| 牛肉の種類 | 消費の目安 |
|---|---|
| 薄切り肉・ひき肉 | 約2~3週間 |
| 厚切り肉・サイコロカット | 約3週間 |
| ブロック肉 | 約1ヶ月 |
家庭用の冷蔵庫はドアを開け閉めするたびに温度が大きく変化するため、業務用冷凍庫よりも劣化スピードが早くなります。また、長期間冷凍保存することで酸化が進み、風味や色味も劣化するため上記目安の期間内に消費するのがおすすめです。
冷凍した牛肉の解凍方法

冷凍した牛肉の解凍方法は、事前に献立を決めている場合や急いで解凍しなければならない場合など、その時の状況によって適した方法が異なります。
解凍方法を4つご紹介しますので、解凍するタイミングに合わせて使い分けましょう。
冷蔵庫で解凍
朝の調理用なら前日の夜に、夜の調理用なら朝に牛肉を冷凍庫から冷蔵庫に移しておきましょう。冷蔵庫の低い温度でゆっくりと解凍されるため、ドリップがあまり出ずに解凍できます。
チルド室のある冷蔵庫であれば、チルド室に入れて解凍するとより良い状態で解凍できますよ。
| 〇ドリップってなに? ドリップとは、肉の入ったパックのそこに溜まっている血のような赤い液体のことです。ドリップが出ることで肉自体のうまみも一緒に流れ出てしまいます。 |
氷水で解凍
大きめのボウルに水と氷を入れ、解凍する牛肉がフリーザーバッグに入ったままの状態で浸します。500gほどの牛肉なら30分程度で半解凍状態になるので、完全に溶けきる前に調理しましょう。
水ではなく氷水にすることで水温を下げ、ゆっくりと解凍することでドリップが出にくくなります。
電子レンジで解凍
事前に解凍しておくのを忘れた場合など、急いで解凍をしなければいけないなら電子レンジを使いましょう。ただし、電子レンジを使用すると解凍メニューで解凍しても加熱ムラができてしまい、部分的に火が通ってしまったり、一部が凍ったままで調理しにくくなってしまうこともあります。加熱途中で取り出して、裏返したりほぐすなどして様子を確認しながら解凍しましょう。
美味しさを出来るだけ損ないたくないのであれば、半解凍状態にして室温で少しおいてから料理するといいでしょう。
牛肉を冷凍する場合の注意点
牛肉を冷凍保存する場合に気を付けるべきポイントについてご紹介します。
密閉して保存する
牛肉にラップをかけて保存する場合、ぴったりとラップをかけてからフリーザーバッグに入れて保存しましょう。酸化や乾燥を防ぐために、出来るだけ空気に触れないようにしてください。こま切れ肉やミンチはどのように包んでも空気が入り込んでしまうので、早めの消費が大切です。
保存容器は牛肉の冷凍には向かない
保存容器で冷凍ができたら小分けも非常に楽になりますが、牛肉の冷凍に保存容器は向きません。なぜなら空気が入ってしまうからです。先ほども説明した通り、空気は酸化や乾燥の原因となるため、ラップとフリーザーバッグを使用しましょう。
保存袋はフリーザーバッグを使用する
保存袋には「冷凍用」と「冷蔵用」があります。冷凍用は冷凍庫の低温に耐えられるよう厚めに作られています。また、解凍ができるのも冷凍用保存袋の特徴です。
冷蔵用よりも冷蔵用の方がやや値段が高めですが、機能自体が異なるため冷凍保存をするためには冷凍用の保存袋を使用しましょう。
冷凍用の保存袋は「フリーザーバッグ」もしくは「冷凍用」とパッケージに書かれているので、確認してから購入しましょう。
解凍した牛肉は再冷凍・冷蔵NG
解凍してしまった肉が余ってしまった場合でも、再冷凍や再冷蔵は衛生面でも鮮度面でもおすすめできません。もし解凍した牛肉が余ってしまったら、牛肉のきんぴらやサラダに乗せるなどして使い切ってください。
冷凍した牛肉の活用レシピ例:時短と美味しさを両立!
下味冷凍や小分け冷凍した牛肉は、毎日の献立の強い味方です。冷凍牛肉の活用に最適なレシピ例をご紹介します。
| 冷凍方法 | おすすめの肉の部位 | おすすめの料理 | 調理のポイント |
| 小分け冷凍 | 薄切り肉、こま切れ | 牛丼、肉うどん | 凍ったまま調味料と一緒に出汁で煮込むことで、うまみを逃さず味を染み込ませます。 |
| 下味冷凍 | 牛モモ肉(薄切り) | プルコギ、青椒肉絲 | 解凍中に味が染みているため、解凍後に強火でさっと炒めるだけで完成。水分が出すぎないよう注意! |
| 調理冷凍 | ひき肉、切り落とし | ハンバーグ(焼いて冷凍)、ミートソース | 電子レンジ解凍後、フライパンや鍋で軽く温め直すか、そのままお弁当に詰めるのもOK! |
特に下味冷凍は、お肉の繊維を調味料がコーティングするため、冷凍による食感の劣化をカバーしつつ、調理時間を大幅に短縮できるおすすめの保存法です。
牛肉の冷凍に関するよくある疑問
Q:牛肉は市販パックのまま冷凍しても大丈夫ですか?
A.市販の牛肉パックに使われているトレイやラップは、冷凍保存には適していません。
冷凍焼けや酸化の原因となるため、必ずお肉をキッチンペーパーで包んで水分を取り、ラップで密閉してからフリーザーバッグに入れ替えて冷凍しましょう。
Q:冷凍した牛肉に変色が見られます。食べられますか?
A.部分的な変色は、冷凍焼けや酸化によるものが多いです。異臭がしたり、触ってぬめりがある場合は安全のために廃棄すべきですが、冷凍焼けや酸化による変色のみで、記事内で紹介した消費期限内であれば、品質や風味は落ちていますが食べても基本的に問題ありません。
Q:冷凍庫のどの位置に置くのがベストですか?
A.冷凍庫の奥や、温度変化が少ない場所、そして金属トレーの上がおすすめです。冷凍庫の開閉で温度が変動しやすいドアポケット付近は避け、温度が安定している庫内の奥に保存しましょう。
金属トレーの上に置くことで熱伝導率が高まり、より早く凍結させることができますよ!
まとめ
今回は、牛肉の冷凍・解凍方法と冷凍した場合の消費期限について説明しました。
牛肉を冷凍する場合は、
- 小分けして冷凍
- 下味をつけて冷凍
- 調理してから冷凍
このように、用途に分けて3種類の冷凍方法があります。
解凍する場合には、以下のようにタイミングに合わせて適した解凍方法を選びましょう。
- 冷蔵庫で解凍
- 氷水で解凍
- 電子レンジで解凍
牛肉を冷凍する場合はラップで密閉し、保存容器は使用せずにフリーザーバッグに入れて冷凍してください。
1度解凍した牛肉は衛生的に使い切る必要があります。もし少量余ってしまったら、何かの料理に入れたり小鉢を作るなどして消費しましょう。


