「低温調理」には専用の調理家電が必要なのでは?と思っている人もいるでしょう。しかし、調理家電を持っていなくても低温調理はできます。
テレビなどで「低温調理したステーキはさらにおいしくなる!」という情報を耳にしたことがあるかもしれませんが、今回は特別な家電を使用せずに低温調理したステーキと、普通に焼いたステーキを同時に調理し、味を確かめてみました。
低温調理が気になっているという方は、ぜひ最後までご覧ください。
この記事は、和牛×ギフトの専門店「肉贈」の店長松本が監修しています。
肉検定1級・2級、家畜商の免許も取得済。和牛の肥育もしています。
「和牛×ギフト」を通して、贈り主&贈り先の双方を幸せにすることを目標に日々活動中。
専用の調理家電を使わずにステーキを低温調理する方法
まず、調理家電を使用せずにどうやってステーキの低温調理をするのかについて説明していきます。
低温調理に使用するのは鍋とフリーザーバッグと調理用温度計のみ
ステーキの低温調理に必要なのは、鍋・フリーザーバッグ・調理用温度計のみです。鍋に水を入れて火にかけ、下味をつけたステーキをフリーザーバッグに入れて50~60℃程度まで温めた水で1時間煮るだけ。
1時間も温度管理をするのは大変そうに思いますが、やり方さえわかっていれば鍋に張り付いていなければならないわけではないため、時間があればこの後ご紹介する調理工程を参考に、ぜひトライして見てください。
低温調理は温度が命!
先ほど50~60℃で煮ると説明しましたが、低温調理は温度が高すぎれば火が通りすぎてしまい、温度が低すぎれば中まで火が通っていないかなりレアな仕上がりになってしまいます。
低温調理の温度と焼き加減の関係は以下を参考にしてください。
焼き加減 | 温度 |
---|---|
超レア | 50℃ |
レア | 53℃ |
ミディアムレア | 56℃ |
ミディアム | 59℃ |
ウェルダン | 68℃ |
このように60℃を超えるとミディアムよりも火が通ってしまいます。しっかりと赤さがなくなるまで火を通したいという方は60℃くらいで煮てもいいかもしれませんが、肉に赤さがほしいという人は50~56℃程度をキープするのがおすすめです。
ステーキを低温調理と普通の焼き方で同時に調理してみた
では実際の調理風景を写真で確認しながら見ていきましょう。
①使用するステーキ肉
今回は、国産のヒレステーキを使用します。150gと148gで厚みに差はありません。もともと柔らかいと言われる部位ですので、低温調理でさらに柔らかさを感じられるのかどうかがポイントとなります。 調理開始前に30分ほど室温におきました。 |
②下味をつけてフリーザーバッグに入れる
両方のステーキに塩こしょうで下味をつけて、一枚は低温調理用にフリーザーバッグに入れます。フリーザーバッグのチャックは閉めなくてOKです。 |
③鍋にお湯を沸かす
鍋にたっぷりの水を入れ、火をつけて60℃程度まであたためます。ステーキを入れると少し温度が下がるため、最初はやや高めにしました。 鍋の底にステーキがつかないように蒸し目皿を敷いていますが、皿などを敷いてその上にステーキをおいても大丈夫だと思います。 |
④ステーキを鍋にいれる
フリーザーバッグにいれたステーキを鍋にいれます。肉を入れたので少しだけ下がって59℃になりました。今回はミディアムレア程度を目指しているため鍋の火は消したまま少し時間をおきます。 |
⑤煮ている間の温度調整
火を消したまま10分放置して温度を確認すると、53.5℃まで下がっていました。これ以上温度を上げたくないのでまだ火を消したまま放置します。 |
ステーキ投入から20分経過したところで50℃を切ってしまっていたので、弱火で火をつけて56℃くらいに温度を調節します。温度が上がったら火を消してまた放置です。 |
ステーキ投入から30分経過し、水温は54.8℃。火をたまにつけて50℃以上をキープしました。 |
ステーキ投入から40分経過し、水温は55.8℃です。ステーキの見た目は10分煮たあたりからほぼ変わらないため、見た目で判断できることはありません。 |
⑥煮ている合間にもう一枚のステーキを焼く
低温調理が終わる前に常温に戻しておいたもう一枚のステーキを焼きます。しっかりと強火で熱したフライパンにステーキを入れ、ステーキの表面が汗をかいたようになったら裏返します。 |
強火で表一分程度と裏面を30秒ほど焼き、アルミホイルに包んで冷めないようにステーキを焼いていたコンロの上にバットをのせて、そこにステーキをおいて休ませます。 |
⑦低温調理終了
60分経過し低温調理が終わりました。温度は53.5℃です。 |
ジップロックから出してみると、このように薄い茶色です。 |
⑧低温調理したステーキを焼く
このままでは見た目があまりおいしそうではないので、焼き色をつけるため低温調理したステーキも軽く焼きます。 |
⑨両方のステーキをカット
どちらも完成したので、カットして断面を比べてみました。上が低温調理、下が普通に焼いたステーキです。低温調理の方はしっかりと赤さが残っておりツヤ感があります。また、厚みがほぼ同じステーキなのに、焼いた方が薄くなっているような気がしますね。 焼いた方はやや火が通り過ぎてしまった感じがあり、低温調理の方が狙った焼き加減にしやすいのでは?と感じました。 |
低温調理と普通に焼いたステーキを食べ比べ
低温調理の方は赤みが強いですが、中までしっかりとあたたかく火が通っています。とても柔らかく赤身のうまみをしっかりと感じられ、焼いてすぐに切り分けましたが肉汁があふれ出てしまうこともありません。
普通に焼いたステーキはミディアムくらいの焼き加減になっていました。ヒレなので柔らかさはありますが、低温調理の方が肉厚感や柔らかさを感じられました。
二枚を食べ比べてみて感じたことは
- 低温調理は温度管理が必要だけど、十分に一度確認する程度でOK(季節にもよりますので、部屋の中が寒ければもう少し頻繁に確認が必要です)
- 低温調理は狙った焼き加減になる
- 低温調理は肉のうまみも柔らかさもアップする
この三点です。
国産牛でも非常に美味しくなったので、もともと美味しい和牛ならさらに美味しく仕上がるのではないかと思います。やや手間はかかりますが、時間があるときにぜひ試してみてください。
まとめ
今回は、特別な家電を使用せずに低温調理したステーキと、普通に焼いたステーキを同時に調理し、味を確かめてみました。低温調理には特別な調理家電は必要なく、温度管理さえしっかりしていれば低温調理のステーキを作ることができます。
やや手間はかかりますが、その手間でステーキがさらにおいしくなりますので、ぜひ試してみてください。